小泉外交の総決算


 6月30日,アメリカ訪問中に,ブッシュ大統領に連れられてエルビス・プレスリー宅を訪問した小泉首相は,ブッシュ大統領プレスリーの妻・娘の見守る中,手渡されたプレスリーのサングラスをかけると,プレスリーの唄の一節を口ずさんでみせた。
 http://hiddennews.cocolog-nifty.com/gloomynews/2006/07/post_47d5.html


 7月13日,イスラエル訪問中に,エルサレム旧市街を訪問した小泉首相は,嘆きの壁の前でユダヤ帽(kippah)を被り,祈りを捧げてみせた。
 http://d.hatena.ne.jp/dokuhebiniki/20060720


 7月14日,ヨルダン訪問中に,同国の世界遺産ペトラ遺跡を訪問した小泉首相は,サングラスをかけて駱駝に乗るパフォーマンスをしてみせた。
 http://asyura2.com/0601/senkyo24/msg/283.html


 7月15日,ロシアでのサミットで,夕食会に参加した小泉首相は,舞台に上がってロシアの民族舞踏を踊ってみせた。翌16日のサミット討議で,小泉首相ブッシュ大統領から「小泉首相は少しおとなしくした方がいいんじゃないか」と,やんわり注意を受けた。
 http://asyura2.com/0601/senkyo24/msg/322.html


 小泉首相が訪問先でこのようなパフォーマンスを繰り広げている間に,東アジアでは北朝鮮によるミサイル発射があり,中東ではイスラエルハマスヒズボラとの戦闘が始まっていた。


 小泉首相のこうした振る舞いは,幼稚(childish)で愚か(foolish)としか評しようのないものである。いやしくも一国の長たる者の訪問先での言動は,その国を代表して為されたものとみなされる。上にあげた小泉首相の言動は,小泉首相個人ではなく,日本を代表して為された外交行動とみなされるのである。東アジアと中東で相次いで危機的状況が発生した最中に繰り広げられた小泉首相の愚行は,世界中に,日本人は幼稚で愚かだというメッセージを伝えたことになる。


 これまでにも無能と評された首相は,少なからずいた。しかし,今回の小泉首相のような行動に及んだ首相は,さすがにいなかった。日本国を背負っているという自覚と責任感から,自ずと身を律していたからである。国際政治の舞台で官僚の書いたペーパーを棒読みして国民をがっかりさせた首相も多かったが,それは自分の熟知していない事柄について不用意な言動をすれば,国を誤らせると考えたが故である。少なくともこのような過去の無能首相の方が,小泉首相よりはるかに政治家として責任のある行動をしていたといえる。


 小泉首相がこのような振る舞いに出たのは,第一に退陣が間近になり気が緩んだこと,第二に少なくとも中東に関しては遠い地域で起こっている日本とは直接関係のない出来事と理解していること,によるものであろう。かっての小泉首相のパフォーマンスは,大衆的人気を得るための意図的に計算された行動とみなすことも可能だったが,退陣間近の今回の一連の行動は,そのように解することはできず,地が出たとしか理解できないものである。


 国会議員等によるこの種の外遊中の乱行愚行は,かねてから珍しくはなかった。小泉首相による今回の一連の行動は,彼の政治家としてのレベルが「旅の恥はかき捨て」議員なみのものであることを示している。


 問題は,こうした政治家としての資質に余りにも問題のある小泉首相を,国民の圧倒的大多数が熱狂的に歓迎し,現在でも約2人に1人が支持し続けているということである。そして,この国民の支持こそが彼を長期間にわたって政権の座にいさせた最大要因であって,いわゆる「世論」の支持がなければ,彼は一日たりとも政権を維持することはできなかったであろう。


 国民は,どうして,小泉首相を支持しつづけるのだろうか?


 一体,この国では,何が起こっているのだろうか?