他を嘲る者の品格

 確か,1960年代半ばだったか,日本が英国のGNPを正に抜かんとしていた頃,英国の大衆紙が日本人バッシングの記事を掲載した。
 それは,日本人が犬を虐待しているというもので,着物を着た日本人男性がステッキで犬を殴りつけている写真が掲載されていた。
 こうした記事に対して,日本人の多くは憤慨していたが,エリート層に属する者は,逆に,大英帝国もここまで落ちぶれたかと憫笑していた。件の記事の背景には,日本に抜かれかけてその現実を受け止められない英国人の焦りがあると見透かしていたからである。

 今日,日本の書店に行けば,反中・反韓の書物が平積みにされ,メディアでも中国や韓国の恥部をことさらに暴くような記事が目立つ。
 こうした現象を見るたび,かっての英国大衆紙による日本人バッシングの記事を思い出す。
 そして,中国や韓国のエリートが現在の日本をどう見ているかも,おおよそ,想像がつくのである。