政権交代についてのメモ書き(3)

 今回、民主党に投票した有権者は、概ね、3つの層からなっていると考えられる。

 第1は、以前であれば社会党共産党に投票していたであろう左派的な傾向を持っている人達で、小選挙区制により社会党が消滅し、その代わりの受け皿として民主党に投票している人達である。この層は、民主党の政策を必ずしも全面的に支持しているのではなく、民主党の政策が右にぶれることを警戒し、これを左側から牽制してゆこうとする傾向を示している。

 第2は、いわゆる無党派層と呼ばれる人達で、その内実は雑多であるように思われるが、ここ数年の自民党政治に対して嫌気が増し、批判票として民主党に入れたと層である。この層には、小泉政権時代に小泉支持の投票行動を取った者も少なからずいると思われ、そうした人達の中には小泉政治に対する批判的意識が必ずしも鮮明でない人達も散見される。こうした人達からは、民主党政権が掲げる官僚支配打破や公共事業見直しという政策は、好意的に受け止められるだろう。

 第3は、従来、自民党の堅い支持層だったのが、小泉構造改革によって打撃を受け、民主党支持に回った層である。今回の選挙で、従来であれば保守王国と言われた地域で自民党候補が軒並み民主党候補に惨敗したのは、従来の地方の草の根保守層に地すべり的な地殻変動が起こったことを示している。

 今回の総選挙で民主党が圧勝したのは、上の第2、第3の層が民主党になだれをうって投票したためである。また、社民党共産党が現状維持にとどまったのは、第2、第3の層では左派勢力に嫌悪感を持つ者が多かったためであり、国民新党が減少したのは、第2の層において依然として旧来型の自民党政治に対する嫌悪感が強かったためではなかったか。

 以上、今回民主党に投票した層は、いずれもコアな民主党支持層とは言い難く、今後、民主党が持続的な勢いを保ってゆくためには、これらの層から持続的な支持を得られるような政策を提示し、実現してゆかなければならない。その際、小泉政治の総括をどう行ってゆくかということが、試金石となろう。