検察の耐えられないいかがわしさ

 検察が小沢民主党幹事長(当時代表)の大久保秘書をいきなり逮捕したのは,麻生政権が末期的症状を呈し,「かんぽの宿」疑惑が世間を賑わし,小沢代表が率いる民主党への政権交代がほぼ確実視されるようになっていた,まさにその時期であった。かつては政局への影響を慮って政治家への立件は選挙後に設定するなどと言われていた検察,それだけに自分たちの行為の政治的効果を百も知っているはずの検察,しかも,このような大きな事件である以上,地検特捜部だけで独走できるはずもなく,検事総長を始めとした組織の総意を踏まえていることが容易に推察できる検察による,政治資金規正法違反という形式犯でのひどく乱暴な逮捕劇であった。なんでこんなことを,よりにもよってこんな時期にやるのかと,私的な事柄でそこにいた某病院の待合室でぼんやり一報を報じるテレビをみるともなく口をあんぐり空けながら見ていた。こうした検察の行為は,ひどくがさつであり,神経を逆なでするものであり,否応なしに嫌悪感を抱かせるものであり,ひどく場違いで,滑稽で,汚らわしいものに感じられた。

 その後,東京地検に続いて大阪地検も障害者団体による郵便割引制度の悪用の捜査に入った旨の分からない事件が突如としてメディアで連日報じられるようになり,これまたそんなに大騒ぎしなければならない理由がさっぱり分からないまま,現職の厚生労働省局長逮捕という,またしても,がさつで乱暴で訳の分らない進展があり,ここでも民主党石井一議員の関与がささやかれ,こうなると,民主党への意図的な狙い撃ちであることは最早見え見えであり,東京地検に続いて大阪地検もという以上は,より一層検察上層部を含む検察全体の意思であることが明白になり,こうまでしてあの小泉,安倍,麻生と醜態をさらした自民党政権擁護になりふり構わず奔走するのかと,その主権者たる国民の選択行動である選挙過程へのかくも露骨な分を越えた介入に,最早検察への癒しがたい嫌悪感がしっかりと心の中に根づいて,考えうる当分の期間は消えることがないであろうと思われるような,そんな思いであった。

 こうした検察の耐えられないいかがわしさ,醜悪さ,越権の沙汰,独善の極みは,民主党への政権交代というこの国の歴史的画期に棹差すようにその後も暴走を止めることなく,今日に至るまで,鳩山,小沢へとその牙をむけ,その広報機関と化したマスコミともども,国民の政治変革への意思を挫き,虚無へと導き,国全体をアパシーに陥れようとして倦むところがない。検察の一連の愚行の愚行たる所以は,その愚行が,今,この時のこの国に,底なしの絶望,虚無,アパシーを生み出し,希望の果ての果てまでを摘み取っている,その邪悪な意思の働きにある。

 私たちは,この事態への嫌悪と拒否から出発し,勢力の分岐をかいくぐり,意思を共有し,道を切り拓いてゆかなければならない。お利口ぶった右顧左眄を拒絶し,何年かまえのあの事件のとき,それからしばらく後に起ったあの出来事のときのように,自らの退路を断つために,この一文を記す。