参議院選挙民主党惨敗後の政治風景

 参議院選挙は民主党の惨敗に終わり、国会は参議院で与党が過半数を取れない「ねじれ」状態に入った。民主党衆議院で三分の二を有していないから、国会は膠着状態に陥り、民主党としてはいずれかの野党との連立を目指すか、それとも立ち往生して解散に追い込まれるかであろう。いずれの道を取っても、民主党の政策上の後退は必至であり、衆議院選挙で民主党に世直しの実行を期待して一票を投じた有権者の期待は裏切られることになろう。

 今回の惨敗の直接の原因が、菅直人首相の不用意な消費税発言にあったことは明白である。しかし、より長期的なスパンで見れば、それは、民主党が政権を奪取する前後からの、検察やマスコミを初めとする既成勢力の攻撃と策謀が、その企図したところをほぼ成就したものと見える。
 検察やマスコミを初めとした民主党に対する攻撃は、一方では民主党の権力を実質的に支えているとみなされた者達−小沢、鳩山、日教組などーに標的を絞った攻撃、これと連動した<小沢対反小沢>といった構図に沿った民主党分裂工作、民主党の政策の中で、従来の自民党霞ヶ関ー財界主流派によって推進されてきた政策と衝突し、相反するとみなされたもの(普天間基地県外移設、格差是正郵政民営化見直し、捜査可視化、記者クラブ改革等々)へ批判を加え、これを軌道修正して従来の政策の枠内に誘導し押し込めること、以上を通して民主党の第二自民党化を実現し(自民党との違いは「政治とカネ」の違い程度に止め)、そもそも当初から構想されていた保守二大政党制にふさわしい政党へと民主党を組み替えてゆくこと等々を目指して執拗に進められ、その帰結が、小沢、鳩山の排除、民主党の「オリジナル民主党化」、その結果としての、先の衆議院選挙で期待された方向性の消失であった。菅首相とこれを担いだ「オリジナル民主党」の面々は、この罠にまんまと嵌った。

 こうして、参議院選挙後の政治風景は、またしても続く、合従連衡の不毛な権力ゲーム(いわゆる「政局」)、政策上の対立の消滅=民主党の政策の自民党化、等々の荒涼たるものとなるだろう。
 そして、残されたものは、陳腐で腐朽しつつある液状化したアンシャン=レジーム、国民の間に広く、深く進行する政治的アパシー、その反面としての政治的言語の劣化と排外化であろう。一度打ち倒された者達はかつての形では復活することができず、その腐朽の度を増すことだろう。

 こうした風景を前にして、我々は、溶解した民主党にひとまず見切りをつけ、現実政治から遥かに遠ざかり、イデアと正義と超越と隠棲の王国に身を移し、この場所からの現実社会に対する総批判の営みを始めなければならない。

 そして、それは、最早、選挙ー議会政治に多くを期待することを断念した、<世界>を意識した、現代日本の外部からの社会的文化的運動の構築と展開を目指すべきであろう。