尖閣諸島沖中国漁船拿捕事件について・その1

 この事件は、中国当局に拘束された日本の「フジタ」社員1名が未だその拘束を解かれていないなど、なお進行中であるが、とりあえず、思いつくままに、メモ書き程度の感想を記しておきたい。

 この事件は、事実関係が未だにはっきりしない。

 最初期の報道では、事件は以下のように伝えられている。

 7日午前10時15分ごろ、沖縄県尖閣諸島久場島(くばじま)の北北西約12キロの日本の領海内で、パトロール中の海上保安庁の巡視船「よなくに」(1000トン)が、中国のトロール漁船と接触した。同じ中国漁船が別の海保の巡視船に接触したとの情報もあり、海保は確認を急いでいる。
 海保によると、よなくにの船尾付近の左舷側に中国漁船の左舷の船首が接触し、よなくにの甲板のてすりの支柱1本が折れるなどしたが、両船とも航行可能で、けが人はないという。よなくにから午前10時半に一報を受けた第11管区海上保安本部(那覇市)は対策室を設置した。
毎日新聞 2010年9月7日 12時44分(最終更新 9月7日 13時06分)
http://mainichi.jp/select/jiken/news/20100907k0000e040068000c.html

 続いて、以下のような記事が出ている。

 沖縄県尖閣諸島久場島(くばじま)北北西約12キロの日本領海内で7日午前10時15分、操業中の中国漁船を海上保安庁の巡視船「よなくに」(1349トン)が発見、領海外へ退去するよう警告した。漁船は逃走し、よなくにに接触後、56分には同島北西約15キロの領海内で、巡視船「みずき」(197トン)にも接触した。その後、領海外へ逃走したが、みずきが強行接舷し、乗組員が停船させた。第11管区海上保安本部(那覇市)は、海上保安庁法(立ち入り検査)に基づき立ち入り検査し、船長について検査を妨害した公務執行妨害容疑で逮捕する方針。
 海保によると、立ち入り検査を受けているのは大型トロール漁船「※晋漁5179」(166トン)。同日午後0時56分、同島の北北西約27キロの日本の排他的経済水域EEZ)で停船させた。
 よなくに船尾付近の左舷側に漁船の左舷の船首が接触。よなくには、ヘリコプターが着船する甲板の支柱が折れた。みずきは停船を求めて並走中、漁船が接触し、右舷にへこみ(高さ約1メートル、幅約3メートル)ができるなどした。
毎日新聞 2010年9月7日 13時33分(最終更新 9月7日 22時07分)
http://mainichi.jp/select/jiken/news/20100907k0000e040080000c.html

 これらの記事を見る限り、漁船は海上保安庁の巡視船に発見された後、「領海外に退去するよう警告」された後に逃走したとなっており、そうだとすれば、そのまま巡視船が漁船を追尾する形で後方に位置していれば、船同士が接触することは、普通はありえないと思える。

 ところが、漁船はまず「よなくに」に接触したとされるが、その接触位置はよなくに船尾付近の左舷側に漁船の左舷の船首が接触したのだという。だとすると、「よなくに」は漁船の前方に回りこんでいたことになる。これは「よなくに」が漁船を停止させようとした結果の接触だと思える。

 その後、「みずき」が、「停船を求めて併走中、漁船が接触し、右舷にへこみができ」たとされ、領海外へ逃走した漁船に、みずきが強制接舷し、停船させたとある。

 この記事がどこまで正確かはわからないが、仮にこうした事実経過だとすると、この事件は、海上保安庁巡視船に発見されて逃走しようとした漁船を巡視船が2隻で追跡して停船させ、その過程で漁船と巡視船が「接触」したという経過だったということになりそうである。