政治家プーチン(2)

 政治を行うに当たってリアリズムを理解していること、清濁併せのむ必要があること、権力闘争を厭わないこと、国家・社会の統合に気を配ること等々は、如何に理想肌の政治家であってもおろそかにすることはできない。さもなければ、その政治家は、政治家としては敗者になってしまう。この点は洋の東西を問わず、いわゆる「自由民主主義国家」であっても、同じである。

 従って、プーチンが政治家としてリアリストであり、強権を振るうことに躊躇せず、権力の集中と統合に熱心であったとしても、これらの点を以て「自由民主主義国家」とは異質の政治家だとは言えないし、精神に異常があるとも言えない。

 尤も、上に挙げた諸点において、プーチンが極めて徹底した権力政治家であり、権力を行使することに躊躇しないことは事実である。従って、いわゆる「リベラル」な政治信条を持つ者にとっては、プーチンは「好ましからざる人物」に見える。

 プーチンロシア連邦からの独立を求めたチェチェン独立の動きを徹底した軍事的弾圧によって鎮圧した。これが大統領としてのプーチンの出発点であり、このチェチェン鎮圧の成功が、民衆によるプーチンの支持を押し上げた。次いで、旧ソ連構成共和国だったグルジア(現ジョージア)がNATO加盟の動きを見せると、戦車部隊を派遣して押しつぶした。続いて、中東シリアにおいては、内戦下で窮地に立ったアサド政権にテコ入れし、軍事介入によってアサド政権を助けた。

 また、国内においてはプーチンに盾突く政治家、実業家、ジャーナリストらを次々と弾圧し、時には毒殺までした。

 今回のウクライナ戦争において、プーチンの手法に対する反発が強く、バイデン政権による「民主主義対専制主義の戦い」という言挙げが一定程度受容されているのも、こうしたプーチンの政治手法に対する嫌悪感のもたらすものである。