政権交代についてのメモ書き(1)

 総選挙で民主党が大勝し、細川政権以来の、非自民勢力による政権交代が実現することになった。
 思いつくところをメモ書きしておきたい。

 今回の民主党の勝利は、自民党霞ヶ関の官僚、財界、マスメディアが密集して抵抗する中を、政権交代を求める国民(のうちの民主党に投票した有権者)が押し破って勝ち取ったものであった。その点で、先の小泉政権発足時の熱狂、同政権下における郵政解散選挙での自民党圧勝とは、対極の性格を持つものである。

 この選挙戦を通じて、政、官、財、メディアという体制エリートの連合と国民(のうちの民主党に投票した有権者)が対峙するという事態が生じた。こうした体制エリートと国民が対峙するという構図は、戦後の50年代頃までは一般的に見られた風景であったが、その後、国民が企業や様々の利益団体に統合され、「体制内」化するにつれ、この国ではついぞ見られなくなっていた。こうした、総「体制内」社会においては、これに抵抗する勢力は、当初は学生、その後は障害者や部落民、外国人などのマイノリティに限定されてゆき、反体制運動もこうした勢力に依拠した周辺的な領域に後退してゆくことになった。それが、冷戦終結後に体制エリート達が推し進めた、新自由主義的な、いわゆる構造改革路線の進展に伴い、エリート層とその他(小泉氏らとともに構造改革を推し進めた宮内氏の言うところの「アザーズ」)の間に劇的な分岐が生じ、非エリート層たる国民大衆の間に不満が鬱積することになった。
 今回の政変は、こうした新自由主義構造改革路線がもたらした、いわゆる「格差社会」と呼ばれるところの階級分化への反動と見ることができる。そして、こうした側面が、今回の政変に一種「革命的」な色彩を帯びさせることとなったのである。

 元来、民主党は、体制エリートが推進した構造改革の一環としての「政治改革」によって誕生し、自らもその推進を目指してきた政党である。従って、民主党の中には新自由主義的、構造改革推進的な流れがあり、他ならぬ鳩山代表も、小沢前代表も、そうした志向を色濃く持ってきた政治家である。
 しかし、今回の政変が上に述べたような、体制エリートに対する「階級闘争」的性格を持つが故に、政権を獲得した民主党も、政策形成にあたって、こうした有権者の意向に配慮する姿勢を見せざるを得なくなっている。もし、小泉政権のようなひどいペテンと裏切りを行えば、どのような結末が待ち受けているかは、今回の自民党の壊滅的敗北がその実例を示しているからである。
 そうであるが故に、こんど発足する民主党社会民主党国民新党の連立政権は、後期高齢者医療制度の廃止、労働者派遣法の見直し、社会保障制度の再構築、郵政民営化見直し、日米関係の見直し等々の「左派的」色彩の政策を打ち出すこととなっているのである。